| 不安 | リュートが悪いとは、思ってなかったけど。 仕事だから、仕方ないし、その為に来た事も、ちゃんと、解ってたけど。 不安になるのは、仕方ないとおもうの。 だって、リュート、抱きつくと、すぐ離れようとするし。 昔みたいに、頭なでてくれないし。 ほかの・・・・男の人と、お茶しろとか言うし・・・。 別に、妬いてほしいわけじゃないけど。 でも、でも・・・・・。 わたし、こない方が良かったのかな。 三年間、リュートに追いつきたくて、沢山頑張って勉強した。 とても、長かったけど・・・・会いたかったけど、がんばったよ。わたし。 でも、リュートは違うのかな。 わたしになんて・・・別に、あいたくなかった? だって、三年間あっという間だったって、言ってた。 わたしが、居なくても、リュートは、ぜんぜん平気みたいだもの。 それなのに、追いかけてこられて、迷惑だった? また、こどもの世話をする事になって、嫌だった? ・・・・・・おとなになってから・・・・くればよかったな。 「・・・・っと言う訳なんですよ。どう思いますかね?アクア殿。」 ・・・・・なんのはなし?とばかりに 急に話しをふられ、アクアは傍から見て解らない程僅かに眉を顰めた。 なまず髭をはやし、いかにも不健康そうに超えたおじん(アクア曰く)から、さり気無く視線をそらして 内心溜息つく。それでも、取り合えず表面上は笑顔を作って 「・・・とても、すばらしいと思いますわ。」 等と返してやった。無論、話の内容など全く聞いてなかったが、この手の貴族の話など、自分の自慢話か、 自分の所有物の自慢話かのどちらかなのだ。ハズレならそれはそれで笑って誤魔化せば良い。 「おおぉ、アクア殿ならば解って下さると思ってましたぞっ!」 が、どうやらビンゴだったらしく、肉がだらしなく垂れ落ちる顔を綻ばせて貴族は喜んだ。 ・・・・・美的センスが・・・けがれるわ・・・・。 内心暴言を吐きながらも、そろり庭に方に視線を向けて、リュートを探そうと試みたアクアは、 そこで、どうやらこの家の娘らしき人物と楽しそうに話すリュートを目の当りにし、 思わずファイヤーボールをぶっ放しそうになった。 いくら命令されたからと言って、よりにもよってこのスケベ変態えろじじぃと二人っきりにさせておいて。 じぶんは・・・せくしーだいなまいととお喋りするなんて・・・・。 わたしだって・・・ないすばでぃーなのに。 などと、リュートが聞いたら失神しかねない台詞を内心で毒づく。 「い、いかがいたしましたかな?アクア殿。」 知らず知らずのうちに顔が強張っていたらしい。貴族の怖じ気づいた声に 慌ててアクアはつくろった笑顔を見せた。 ・・・・・つかれた・・・・・。 ぞくっ! な、なんだか今すごい悪寒が・・・。 っと言う訳でこちらは、いかにも金銭ばかりが掛っていそうな、悪趣味な 熱帯植物の蔓延る庭の一角。植え付けられた危機感でアクアの怒涛の怒りを感じ取ったのか、 リュートはぞぞっと身震いした。 「リュート様、リュート様。」 「え?あ、すみません。」 が、不機嫌そうな声に、慌てて笑顔を戻す。上流貴族夫人相手に、失態は許されないのだ。 丹念に梳りされた黄金色の髪と、男好きしそうな甘い雰囲気漂う色めいた表情。 アクアとそれ程変わらぬ年だろうに、彼女は父親程も歳の離れているこの家の主・・・ 現在アクアと話している男の妻であった。 だからと言って同情できないんだよね・・・。 夫が無節操なら、妻も妻だからである。普段仕事の一貫で情報操作もするリュートは、 社交界の女王と言われる彼女が、影でどの様な乱交に及んでいるか、嫌でも耳にしていた。 「ずっと上の空ですわね・・・・そんなに気になります?使者様が。」 「いえ・・・。」 肯定する訳にもいかず、頭を振ったリュートではあったが、内心気になって仕方なかった。 何をかくそう泣いて走り去って、シリウス様にファイヤーボールぶっ放したあの日から、アクアは リュートを避ける様になっていたからである。 無論、国賓と案内人と言う立場上、行動を共にしなければならない事も多いのだが、 それでも瞳を合わせようとしないし、口数も極端に少ないのだ。謝罪の言葉にすら、「リュートが、どうしてあやまるの。」っと冷たい声プラス一瞥で返されて、 取り繕うしまもないのである。 「ふふふっ・・・無理もありませんわ。宮廷内の殿方も、近頃は皆、使者様の噂ばかりですもの。」 扇を口元に当て、優雅に微笑むまれて、リュートは苦笑した。 「リュート様とは、昔からお知り合いなのですわよね?ふふっ、一体どういうご関係なのかしら?」 興味津々と言った様子で訊ねて来る婦人に、内心溜息を吐く。驚かなかったのは、この質問に慣れすぎてしまった為。 アクアがやってきてから、友人、知人、下町のおばさんから果ては通りすがりのご老人まで。言い方は違うにしろ、悉く同じ質問を聞かれ続けてきたのである。 忍耐の男と言われるリュートとて、辟易しても無理ないだろう。 何より、リュート自身、その答えを見出せていないのだ。 妹・・・・のはずだったんだけどな・・・・。 ほんの数年で、見た目は、超の如き羽化を果したにも係らず、 傍若無人に周囲を翻弄するその気質はあの頃のままで。それが更にリュートを困惑させた。 「好き」だと言ってくれるその言葉は、あの頃となんら変わりないと言うのに、 同じように受け止める事がどこか息苦しい。 「あらあら、どうしましたの?考えてしまわれて・・・ふふ、言えないようなご関係なのかしら?」 「い、いえっ・・・・!彼女は・・・・妹のような存在で・・・・。」 そこまで言いかけてリュートは口を噤んだ。いや、背後から忍び寄った冷気に本能的にそうせざるを得なかったのである。 ぎぎぎっと錆びたマネキンの如くぎこちない動作でゆっくりと振り返るリュート。やはりというかなんというか、そこには 異様に目の座ったアクアの姿があった。 「・・・・・話は・・・終ったわ・・・帰る。」 無表情でそれだけ言い放つと、返事を待たぬ内に踵を返すアクア。 「あ、待って、アクアさんっ!」 失礼しますと、婦人に一礼をして、リュートは慌てて追いかけた。 踵を返す刹那、寂しそうに揺らいだアクアの瞳に心を占められて、 リュートは気付かない。 社交界の花と歌われる貴婦人の美貌の面に、般若の影が過ぎった事を。 続くお題『例えばいなくなったら』へ |
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・・・・・お決まりな展開でごめんなさい・・・もう暫くお付き合い下さい。(汗)
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