伝えられなかった思い





寄せては返す波のように、

人は訪れてはいなくなり、



出会いを繰り返しては別れていく




ねぇ。



もし、何の力もないわたしを、人が幸せにすることができたら・・・・


その時は・・・・。











寄せては返す波のように。
繰り返される海の音は、どうしてか、悲しい。

それに耳を傾けながら、少女はゆっくりと浜辺を歩いていた。

もし、なんの力もない私を、人が幸せにすることが、できたなら。

波打ち際に佇み、海水に足を浸しながら、少女はゆっくりと手を開いた。
其処にあるのは、暗闇を照らす筈だった、彼女の星。
今はもうなんの力もないそれは、だけどやはりかすかな光を放っていて。

少女の頬を涙が伝った。


「わたし、目に見えて、できがわるかったものね。」


「さようなら。」


淡々と、平然と、そう言ったけれど。
確かに、無力だけれど。


それでも、幸せに、なりたかった。
傲慢だと解っていながらも、ほんとうは、引き止めてほしかった。

最初に、出会った日の様に、此処にいても良いよって。言ってほしかった。


ザザーン・・・・・・・


一際打ち寄せた波は、冷たく少女の体を濡らす。
凍えるような寒さも、少女にはどうする事もできなかった。

無力だから。


「誰か・・・・いない・・・・?」

小さな声で、誰ともなくそう問うた。返事の代わりに、泣くような風が吹き付けた。

「そう・・・・。」

少女は悲しげに瞳を伏せる。

わたしは・・・・また・・・駄目だったのね・・・・。

虚無感にも似た絶望が、胸を支配する。けれど、少女は直に首を振った。

ううん・・・・そんなこと・・・ない・・・。


私は、たしかに・・・しあわせだった・・・。

一睨みで、鬼をも殺せそうな顔して、実は不器用な男。
その身に架せられた期待と束縛に負けず、気丈に振舞う小さな王様。
何処までも嘘つきで、馬鹿だけど、世界を愛してくれる男。
口は悪くても、素直な騎士と、優しさの中に、心の葛藤を秘めた騎士。
しなやかで、強いもう二人の候補生。
そして・・・・彼女の、家族だった、二人の、不器用な魔導師。

・・・・・・・・好きよ。

少女は、心の中で囁いた。

彼らは、呼んでくれた。たった一つ、この世界にもってきた。名前で。

『アクア』と。

確かに、彼女を見つけて。叱り、笑い、手を差し伸べ。
全ては、手の平の星が齎した泡沫の夢かもしれないけれど。

でも、



・・・・・・好きよ。




この世界が。




人が。





「ごめんね・・・・。」



だから、少女は謝罪をした。誰ともなく、只、胸を突き上げる罪悪感に。
私は・・・まだ、あきらめられない。

きっと、

次に生まれる、何十年、何百年先。
もう、今見た世界は何処にもないかもしれないけれど。

二度と伝えられない思いを胸にした少女を、一際大きな津波が襲った。
何処か、怒りのような、戒めのような力をもってして。
小さく無力な少女の体は、余りにあっけなく海の中へと攫われる。



ねぇ・・・・つぎ、うまれるとき。



わたしは・・・ちゃんと、いえるかしら。




せかいを・・・あいして・・・・・・





せかいに、あいされて・・・・・・









好きよ・・・・って。








コメント:

基本的にハッピーED支援なワタクシですが、アクアバットEDは美しくて好きです。 でも難しいなぁ・・・満足いけるものはなかなか書けません。