June Bride
コンコンコン。
部屋のドアが丁寧にノックされ、返事を待たない内に、茶色の髪を短く切りそろえた少女が顔を除かせた。
「ディアーナ、できた?」
楽しそうに尋ねたメイだが、振り向いたディアーナの姿に思わず息を飲み込む事となる。普段幾つもに結ばれている桃色の髪は高く結い上げられ、
幼さの残る面に少しだけ施した化粧が、彼女の若々しい可憐さを一段と引き立たせている。彼女の婚約者の髪の色に合わせて
ウエディングドレスは、青をベースに作られていた。大きいリボンがこれまた愛らしい彼女に良く似合っている。
「。。。にっ。。。。似合いますかしら?」
少しはにかみながら、上目遣いで尋ねてくるディアーナにメイは心底思った。
(可愛い!!!!!可愛いすぎる!!!)
「うん、スッゴイ似合うよ。」
女の自分でもこの場で押し倒したくなる程に。などとちょっと物騒な事を考えるメイだが、
悪魔で口にはしない。大体そんな事をすれば、彼女を没愛する恋人に一瞬にして抹消される事は
目に見えている。だが、それにしても可愛い。もうこの上なく可愛い。老若男女問わず、今のディアーナを見れば、
誰もが抱き締めたくなる衝動に駆られるに違いないとメイは心底思った。そこではっと気づく。
今の彼女をシオンに見せてはならない。
シオン。。。王宮筆頭魔道師であり、彼女の恋人、今正に夫になろうとしている人物。
誰もが目を引く要望を持ちながら、浮世話は絶えず。そんな彼と王女であるディアーナの
交際は、兄のみならず、誰もが不安を抱いたものだ。彼女の親友であるメイやシルフィスに当たっては、
ディアーナを泣かせよう物なら、暗殺してやる。などと可也物騒な事まで計画していたりする。。。
が、周囲の範囲を大きく裏切り、(それを好ましく思わない物役一名(笑))シオンの没愛ぶりは
誰もが驚愕する物であった。ディアーナと一日でも顔を会わさなければ、それだけで機嫌悪くなり、
彼女を抱き締めて眠るのは当然の日常。もちろん、ディアーナを没愛している兄は、この事は知らない。知っていれば
シオンの首はきっと今ごろなかっただろう。そして、周りが迷惑する程のラブラブっぷりを見せ付け、
現在にいたる。よく言えば、相思相愛。悪く言えば国一のバカップルである。そんなシオンが、今のディアーナを目の当たりにすれば、
それはきっと結婚式なんて放ったら貸しにして、彼女を押し倒してしまう事は目に見えている。それだけは絶対に避けなければ、とメイは
心でガッツポーズを取った。
「それでは、シオンにもみせてきますわ。」
嬉しそうに部屋を飛び出そうとしたディアーナに気づき、メイは慌てて引き止める。
「だめよ!!ディアーナ!!!!!」
「何故ですの?」
(そんな事したらシオンにその場で食べられるわよ!!)
普段シオンの事については良く解っているディアーナなのだが、何故かそっち方面には何時まで
たっても鈍いのである。其処が又可愛いのだが、今は状況が違うのだ。
「だって、本番で見せた方が、感動も倍増って奴よ!?隠しておきなさいって!!」
そう尤もらしい理由をつけると、ディアーナはあっさりと納得する。その反応が素直過ぎるのだが。。。
それも又彼女の魅力である。メイは後で呼びに来るから。。。。っと部屋を後にすると、もう一人の人物を阻止する為に
走り出した。
「よぉ。嬢ちゃん。どーした?キールなら向こうだぜ?」
廊下を歩いていたシオンは息を切らせ、向こうから突っ込んでくるメイに驚いて、声を掛けた。彼の本音としては、
今は一刻も早く愛するディアーナのドレス姿を見たいのだが、メイの只ならぬオーラに、今声を掛けねば
彼女得意のファイアーボールでも食らわさそうだと直感し、仕方なしに声を掛けた訳である。っが、何処となくキールに矛先を転換しようとして
いる当たりがなんとも彼らしい。
「シオン、今ひょっとしてディアーナの所に行こうとしてる?」
「とーぜん。」
あっさりと答えたシオンにメイは小さく舌打ちした。予想はしていたが、
やはり、ディアーナの事でシオンとイザコザは起こしたくないのが本音である。
彼女の事となると、何時も傍若無人な彼も、人が変わるので。
「あのさ、ディアーナ、式でシオンを驚かせるの楽しみにしてるみたいなんだよね。だから、式まで待ってやってくんない?」
自分でも表彰したいぐらい素晴らしい言い訳である。。。っとメイはこっそり自賛したが、何分相手はシオンである。すぅっと目を細める仕草が
怖い。
「嬢ちゃん、また何か企んでるんじゃねーだろーな?」
ぎくりっとしそうになるメイだが、今回は別に何か企んでいる訳ではない。引いて駄目なら押してみろっとでも言わんばかりに、彼女らしく大きく出る事にした。
「あのねー。ウエディングドレスって言ったら女の子のロマンなんだからね〜??それくらい察してあげなさいよ!!ディアーナの悲しむ顔が見たいの!!?どーせ式まで後1時間じゃん!!」
メイの発言は尤もだが、それ以上に、シオンにとってはディアーナの悲しむ顔は絶対に見たくない物の一つであった。何時もからかって怒らせてはいるが、それは
悪魔でも彼女の怒る顔が見たいが為であり、ディアーナを悲しませる訳では決してない。
「そーゆーもんかねぇ。へーへー、解ーったよ。それじゃあ大人しく撤退しますかね。」
苦笑しつつ手を振りながら去るシオン。メイはばれない様にほっと溜息をついた。これで一応式は無事に開けるに違いない。
幾らシオンでも人前でディアーナを押し倒すような真似はしないだろうなどと洒落にならない事考えながら、
メイはディアーナの待つ部屋へと戻るのであった。
−−−−−−−−−−−−−−−Intermission−−−−−−−−−−−−−−−
式の準備は着々と進められる。賑わう人々には、其々思う事がある様だ。
「私はまだ認めておらんぞ!!まったくシオンめ、勝手に結婚式を決めるなど!!!」
「まぁまぁ、殿下。お二人が幸せならそれで良いじゃないですか。」
「くっ。。。。ディアーナも何故よりにもよってシオンなど。。。。所で、シルフィス、私の事は名で呼ぶ様に言っただろう?」
「えっ。。。。あっ、はい。でも。。。まだ慣れなくて。。。」
「良いんだよ。序所になれてくれれば。君ももう王妃なのだから。」
「はい。。。。セイル。。。。。」
なんだかんだ言って怒っていた殿下だが、あっさりと二人の世界に突入している。
シルフィスと元皇太子(現クライン国王)であるセイリオスも、何ヶ月か前に結婚したばかりである。その熱々ぶりは、
シオンとディアーナには負けるものの、一旦お互いの世界に入ると、誰の声も耳の届かず。中々抜け出せないと言う粘着質な
習性を持ち合わているあたり、結構タチが悪い。(爆)
「あーあ。二人とも自分たちの世界に入っちゃったよ。これじゃあ暫く何もできないねー。」
「まったく、殿下もシオン様も。。。。。。人目を少しぐらい気にして下さいよ。」
「あんたは気にしすぎなのよー。ねー、私たちもしよっか。」
「なっななななな!!!!(赤面)」
「ちょっと!何想像してんのよ!キスよ、キス!!」
「そんな事此処でできるか!!!」
「できるわよ〜!!。。。。。。。。。。ね?」
「。。。。。。。っお前!いきなりっ!!!(茹タコ状態)」
キールよ。人の事は言えないな。本人たちの性分からか、結婚はしていないものの、負けない程の
ラブラブっぷりを発揮しているのはメイとキールである。熱烈に自分たちの世界に入り込む二つのバカップルに、
更に今から登場しようとしているこの四人をも遥かにしのぐバカップルの事を考えると、
用意を進めていた周りの人間は誰しもが頭痛を覚えたのだった。そして、王女の結婚式は幕を開ける。
−−−−−−−−−−−−−−−Intermission−−−−−−−−−−−−−−−
長いヴァージンロードの入り口に、ディアーナが、前国王の手に繋がれ、現れる。席の最終列から
感嘆の溜息が漏れ、それは序所に式場全体へと広がる事となった。ゆっくりと歩くディアーナは、
それはもう天使の如き美しさだったからである。っが、人々の驚愕よりも、一番驚ていたのは、
彼女の夫になろうとしているシオンかもしれない。目の前にいるディアーナの変貌ぶりに
しばし硬直してしまい、彼女を凝視してしまったぐらいだ。ディアーナらしく、
可憐で愛らしく、そして幼げな仕草はそのままなのだが、ベールで微妙に隠された面から
除かせる、少し恥ずかしげな表情が、なんとも艶かしく彼を誘う。この場で押し倒してしまいたいなどと、
メイの予想通りの思考がシオンの脳裏に浮かんだ。っが、今は悪魔でも大切な式典。いくら彼と言えど、
それくらいの事は解っているのである。非常につらい、そう
非常に辛いが、我慢するしかない。(爆)
「。。。。どうかなさいましたの?シオン。」
ズキュ--------------------------ン!!!
なんだか何時もと違う恋人の様子に怪訝そうにベールを少しだけ捲らせて、至近距離で
彼の顔を覗くディアーナ。紫色の瞳が麗しく彼の目の前で揺れる。それはもうシオンにとっては
絶大効果を発する物だとは本人はしらない。
「いや、なんでもねーよ。姫さんがあんまり可愛いんで思わず見とれたぜ?」
何時もの様に軽くウィンクを飛ばすが、彼の内心は頼むからこれ以上誘わないでくれーーーーー!!!
っとディアーナには当然理解できないかつ無理な事を叫んでいたりする。そんなシオンには
気づかず、ディアーナはぽっと頬を染めるのだが。。。。。これが又逆効果。果たして
シオンの理性は続くのやら。。。。。とりあえず式典は続き、誓いの言葉を終らせるまでは行ったようだ。
「それでは、誓いの口付けを。。。」
神父の言葉に、シオンは待ってましたとばかりにニヤリとした笑みを浮べた。そう。こんな面倒な式典は
さっさと終らせたいのが本音だが、誓いのキスだけは別である。ここ何日間か、嫌がらせの如く(実際嫌がらせなのだが)セイリオスから
与えられる山の様な仕事の数々により、ディアーナとの大切な時間を削らされ、そしてキスも侭ならない彼は
相当我慢の限界に来ていた。それに更に追い打ちを掛けるかの様に現れたディアーナのなんとも形容しがたい麗しくも美しい姿を目の前にして、
此処まで我慢しているシオンは賞賛に値する。。。。。。。のかもしれない。
「シオン。。。。。愛してますわ。」
「俺も愛してるぜ、姫さん。」
ぽっと頬を赤らめるディアーナ。それでシオンの理性は完全にはじけ飛ぶ。ディアーナの頬を掴むと、
それはそれは濃厚なキスをしたのであった。拍手する人々も照れるぐらいに。
。。。。。。。。。。。。。。。。っが、
十秒、二十秒経っても二人は一向に離れようとしない。拍手する人々も、止めるか続けるか
困り果てている。そして、三十秒経過。。。。。四十秒経過。流石に苦しくなって来たのか、
ディアーなが抵抗の兆しを見せるが、逃れられないように、片方の手で彼女の腰を引き寄せるシオン。
ディアーの舌に己のそれを絡ませ、人目も気にせず深く口付けを続ける。そんな二人の様子に、
呆れる眼鏡の魔道師と騎士団隊長、まるで人事の様に面白がっている吟遊詩人と異世界の少女。
赤くなるシルフィスとガゼル。そして。。。。。。。一人殺気立ったオーラを放つ現国王、セイリオス。
「でっ。。。。。殿下。。。。」
夫の只ならぬ様子に気づき、恐る恐るシルフィスが尋ねるが、彼の頭にはそりゃぁもう誰の目から見ても
くっきりと青筋が何本も浮かび上がっていた。やばい。この侭ではこの場でシオンに切りかかり兼ねない。などとシルフィスが
冷や汗を流した矢先、やっとシオンの腕がディアーナを解放した。
「ぷはぁ。。。。。っ。。。。シオン〜〜〜〜!!!」
解放されたディアーナが、涙目になりながら、恨みがましい視線でシオンの方を見ると、彼は案の定面白そうに笑っていて。
「まぁ、良いじゃねーか。俺の愛はそれくらい深いって事で。。。」
「シオン貴様!!!!人前でディアーナに淫乱な事を!!!許せん!!!」
これまた人目を弁えず立ち上がったのは他でもないセイリオス。完全に切れている。これは非常にヤバイ。
「何言ってるんだ?俺は姫さんに誓いの口付けをしただけだぜ?神聖な儀式を淫乱などと言ってもらっちゃあこまるなぁ。」
誓いの口付けに一分以上も掛ける奴があるか!!!っと怒鳴り付けたいセイリオスだったが、其処ですかさずシルフィスが止めに入った為、
なんとか場は丸く収まった様だ。っが、殿下の怒りがこれしきで収まるとは到底思えない。きっと今ごろは更に倍以上の仕事を彼に押し付けようなどと、姑息な事を
考えているに違いない。が、その話はさておき、式は何事もなくながれ、最終パーティーへと突入する頃には、日はもうすっかりと暗くなっていた。
「ふにゃぁ。。。。私、流石に疲れてきましたですわ。」
ヴァルコニーにて、人に聞こえないように小さく呟いたディアーナだが、彼の夫にはしっかりとばれたらしい。後ろからすっくりと
抱きかかえられると、耳元で囁かれる。
「俺も疲れたな。(我慢するのが)」
そう言った彼の顔に意地悪そうな笑みが浮かんだ事はその時下を向いていたディアーナは気づかなかった。
「それじゃあ、二人で抜けようぜ?」
「ええ??それじゃあ皆に悪いですわ。。。。。きゃっ」
言い終わらぬ内に行き成りシオンに抱き上げられたディアーナは思わず叫びそうになるのだが、
それを手でしっかりと押え、彼女の講義もそっちのけに、シオンはさっさと転移呪文を唱えた。
「もう、シオン〜〜〜ばれたらどうしますの〜〜〜???」
着いた先は当然シオンの部屋で。彼女はベットの上にふわりと降ろされる。何時もの事だが、強引な彼の行動に講義をするディアーナだが、疲れきっている所為か、それも侭ならない。それに、
シオンがそんな事を一々気にするような人物ではない事も解っていた。
「まぁ、いいんじゃねーの?ばれたらばれたで。」
やはりそう来るか。
「しっかし、その格好は本当に可愛いぜ。姫さん。花の精も適わねーな♪」
誰もが人目で見惚れそうな程に甘い笑みを浮べるシオンに、ディアーナはぽっと顔を赤く染めた。
「それじゃあ、これは可愛い天使の誕生日プレゼントっつー事で。」
そう言うや否や、シオンの手に大きな花束が現れる。
「まぁ、シオン、私にですの〜!!??有難うですわ〜!」
満面の笑みを浮べてそれを受け取ったディアーナを、シオンはすかさずベットに押し倒す。きゃうっっと
可愛らしい声を上げたディアーナだが、見上げた彼の瞳は真剣で、思わず言葉が出なくなる。
「やっぱり着飾った姫さんも良いけど、俺としてはそのまんまの姫さんが一番だな。」
「そ。。。。。そのまんまって。。。。??」
なんとなく嫌な予感がし、恐る恐る尋ね返したディアーナだが、そんな彼女に、シオンはけろっと。
「もちろん、裸の姫さん♪」
と答える。
「なっ。。。。ちょっと待ってくださいまし!!きゃぁぁ!!!!」
身の危険(笑)を感じ、急いで逃れようとする彼女だが、そんな事が許される筈もなく、
当然の如く彼に美味しく頂かれてしまった事は言うまでもない。
余談だが、式の最中に抜け出し、しかも朝帰りしたディアーナにセイリオスが切れ、シオンに更に3倍とも言える仕事を与えたらしい。
結婚しても二人の道のりは激しそうである。
..........Never End?
-あとかき-
ざぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!( ̄皿 ̄)<砂吐き中(爆)
ネタ的にはジューンブライドとか言う代物。(爆)
こう言うほのぼの、幸せ、バカップル、ラブラブは思いっきり専門外なんですー。(T−T)裏書いて
いた方が遥かに恥ずかしくないのは何故なのでしょう。(爆)シルフィス×殿下、メイ×キールは
お決まり過ぎてあんまり使いたくなかったんですが、<此処はマイナーメインですし。
まぁ、やっぱり幸せにね。と言う事で。ディアが幸せであれば後はどうでも良いんですけど。<酷い>