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貯水システムの建設は二ヶ月ほどで完了した。 幸い、メッジモークには干上がったオアシスの跡地が有り余っていたから、その中の一つを貯水用の堀とし、傍に直径20mもある罐(かま)と、湖の水を一時的に注ぐタンクを造った。 そして、最後に溜めた水が蒸発してしまわないよう、警備の意味もかねてその上に神殿を建てる。 後は、地底泉から水を運び込むだけだ。あれだけの水を運ぶには、何度も行き来しなければならないが、こればかりはどうしようもない。一度に運ぼうとして事故がおきた時を考えると、慎重な方が良いだろう。 リアサーラと共に出発した第一隊はそろそろ着いた頃だろうか。 「り、リトっ…!お、お願いです、止めさせて下さいっ!!」 いつになく青ざめた顔で現れたマリーンは、俺の姿を見るなり、涙を浮かべてそう叫んだ。
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さかのぼる事少し前。 私は、宮廷庭の噴水に腰かけて、いつものように水遊びをしていました。 はぁ…私は一体どうしてしまったんでしょう。 リトがここに居ても良いって仰って下さったのはとても嬉しかったです。 溜息吐きながら、浸らせた両足を意味なくばたつかせた私の耳に、声が聞こえてきたのはそんな時でした。聞こえるというよりも、頭に響くような囁き。
『帰ってきて。』 『帰ってきて。』 『ママ、ママ、帰ってきて。』
最近、水に近づくと聞こえるようになった声。
『助けてっ!!』
どくんと心臓が弾けて、まるで早鐘のように鳴り出す。 白い空があっという間に青い暗闇へと反転して、気がつけば目の前に大勢の人が立っていました。さまざまな器具を手に持った人々は、突然現れた私に手を止めて何事かというように私に視線を浴びせかけてきます。 「女神の使者様!?」 自分の行動に困惑していた私の耳に天の助けとばかりに届いてきたのはオルドスさんの声でした。 「どうなされたのですか?隊長のおつかいですか?」 駆け寄ってきて私の頭をぽむぽむと撫でるオルドスさん。 「あの、皆様なにをしてらっしゃるのですか?」 それが間違いであるとは微塵も思っていない、誇らしさすら滲ませた声で言い渡された事実に、私の体を、まるで雷に打たれたかのような衝撃が走りました。 なに、なに、これ。 「や、止めて下さい!!」 刹那放たれた悲鳴は、自分でもびっくりするほどに悲痛なものでした。 「大丈夫ですよ、女神の使者様。心配はいりません。」 大丈夫じゃない、解っていない。 「違うんですっ…!違います!水を運び出すのは止めて下さい!」 オルドスさんがその台詞を言い終える間もなく、私は一瞬にして転移魔法を唱えていました。この世界で最も感知し馴れた気配を追って、私は意識を飛ばす。 今すぐ、今すぐに止めさせなければ―――。
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「り、リトっ…!お、お願いです、止めさせて下さいっ!!」 いつになく青ざめた顔で現れたマリーンは、俺の姿を見るなり、涙を浮かべてそう叫んだ。 「泉の水を運び出すのは駄目ですっ!!」 真っ先に思い立った疑問はそれだった。 「今はそんな事を言っている場合ではありません!速く…速く止めさせて下さい!」 酷く取り乱して俺の袖にすがりつくように懇願するマリーンの姿に、困惑と共に苛立ちが募ってくる。一体なんだっていうんだ。 「泉が死んでしまうからです!どうして、どうしてこんな事するんですか…!」 泉が死ぬ…? 「いいから一旦落ち着け!突然現れて捲くし立てられても意味が解らん!」 厳しい怒号に、マリーンがびくりと震え、怯えたように俺を見上げた。 「…この政策に携わっている人間は、一人二人じゃないんだ。俺が一言止めると言って止められる問題じゃない。」 当然のことを言ったつもりだった。 「それでも、私は助けます…!」 再び顔を上げたマリーンの目にはもはや迷いはなかった。 「止めてくれないなら、私が、絶対に止めさせます…!」 引き止める為伸ばした手が空を掴む。
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