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いくつもの分かれ道を通り、上っているのか降りているのかすら解らない道のりが、このまま永遠に続いていくのかと思った矢先。別世界のようなその大空洞は、突如不意打ちのように目の前に現れました。 お城の庭が、三つは軽く入りそうな大きさです。それまで微塵の光も差し込まない道ばかりでしたが、大空洞は壁の間に小さな穴がいくつもあけられているようで、隙間から差し込む光の筋が、幻想的に光り輝いておりました。 奇麗…。 光は、調度大空洞の中心で交わり、大きな、岩のようなものを照らし出していました。 巨大な、漆黒の甲冑は既に浅黒く大地と同化し、光る紅玉の瞳があったであろう場所には、いくつもの果てしない穴が開いているだけ。それは、紛れも無く、スコーピオンの抜け殻(ミイラ)でした。 「これが、我らがマザーであったものです。」 亡骸を見上げ、一縷さんは心の読めない表情で私に振り向きました。 「少し、話をしましょう。マザーになって頂くには、我々について知ってもらわないといけませんから。」 そういうと、一縷さんは、背からするりと尾針を伸ばし、私の体をやんわりと持ち上げ、その上に座らせてくれました。 「長い話になりますから。」 つ、疲れないようにとのご考慮だったのですねっ!し、紳士的ですっ!
「我らがマザーが…この世界に降り立ったのは、もう数百年も前だと聞き及んでいます。」 世界の枯渇はまだ浅く。スコーピオンの始祖は、辺境の小さな集落に人の姿で紛れ込んだのだと、一縷さん言いました。殆どの精霊は、二つ以上の姿に変化する事ができます。どちらが真の姿というのは実は難しく、私の場合、姿を維持するための魔力消費量が少ないので、大蛇の姿を『真の姿』だと証しています。 「そして、人の姿で過ごすうち、マザーは、人間と恋仲になったそうです。」 えっ。 「男は、とある部族の長で…マザーの…蟲の姿を眼のあたりにしても、変わらぬ愛を誓いました。」 愛だとか恋だとかいうわりに、一縷さんの糸のように細長い眼からは、何の感情も読み取れず、私はやや困惑しながら、話の続きを聞きました。 「ところが、その内、人間の部族内で争いが起きました。我々スコーピオンには、毒を扱う能力があります。族長であったマザーの恋人は、マザーに、敵集落の水源を毒化するよう頼みました。」 そうでなければ、部族が滅びると。 けれど、部族の民は、次第に水源に毒を撒き散らす蟲の存在を恐れるようになりました。 「それまで、一度たりとも愛を覆した事がなかった男も、生まれてきた『蟲』を見て、顔色を変えました。」 さすがに人間の姿をした美しい女から、異形の怪物が生まれれば、卒倒してもおかしくありません。
「我らがマザーは、生まれて来た子らを連れ、嘆きの谷を越えて、この地に逃れてきたのです。そうして百年以上が過ぎ、メーラルの民は、我らの事を忘れていきました。…その栄華が、我らによって齎されたものでありながら。」
話を聞き終えても、私は動くことができませんでした。 混乱していると、するりと座っていた尾針が動いて腰に絡まりました。 「私は、心配なのです。あなたが、マザーの二の舞になってしまわれるのではないかと。」 ぎくりと体をこわばらせ、私は一縷さんの糸のような細長い、感情の読めない瞳を凝視しました。 「あなたはここにいるべきなのですよ。」 すいっと一縷さんの手が伸びてきて、私の頬を掴みました。 「ですから、今度こそ、私をお選び下さい。マザー。」 今度…こそ…? 糸のように細い眼が、うっすらと見開かれ、赤い瞳孔が覗く。 「そのような眼差しの方が、マザーらしくて好ましい。」 もう既に、一縷さんの中で、私の存在はマザーとして確定されているようです。 「蟲の姿で交わることをお望みなら、それでもかまいませんが。」 きゃーーーっ!!読まれてますっ!そして私は蟲じゃなくて爬虫類ですっ! うわーん、前言撤回つ!この方、全然紳士じゃありませんーっ!
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マリーンのせいでシリアスな場面も台無し…。( ̄▽ ̄; ネット小説ランキングに入っております。宜しければ投票してやって下さい。
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